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更新日:2023年4月1日
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不妊の原因は男性にも女性にもあり、その割合はほぼ同じで、原因がわからない場合や複数の場合もあります。原因を早期に明らかにするためには、男性も女性も同時に検査を開始することが必要です。
●排卵障害 ●子宮頸管粘液の異常 ●卵管の異常 ●子宮内膜症 ●子宮の形や内膜の異常
不妊の原因の中で最も頻度が多く、卵子が育たない、あるいは育っているのにうまく排出できないなど、排卵が正常に行われない状態をいいます。
排卵障害には排卵に関わるホルモンが関与し、月経異常を伴うことが多くあります。
代表的なものには以下の4つがあります。
ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌の乱れ、減少により卵胞の発育が悪くなり、月経はあるが排卵しない「無排卵周期症」や月経そのものがない「無月経症」などを引き起こします。
精神的ストレス、無理なダイエットが原因となる場合もあります。
本来、出産後の授乳中に分泌される乳汁ホルモン(プロラクチン)が増え、排卵障害、黄体機能不全の原因となります。
視床下部から分泌される神経伝達物質のドーパミンの不足、胃潰瘍やうつ病の薬の服用、下垂体にできた腫瘍、甲状腺機能低下などが原因となります。
卵巣内に直径数mmの多数の卵胞が存在し、それ以上成熟が起こらず排卵に至らない状態です。
卵巣の表面を被う膜が厚く、男性ホルモンが高値、またはFSH(卵胞刺激ホルモン)の値は正常でLH(黄体化ホルモン)の値が高くなります。
診断には、ホルモン検査や卵巣の超音波検査が必要です。
排卵誘発剤(hMG-hCG)を使用した場合、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群を起こしやすいのが特徴です。
卵胞の成熟が不充分な状態で排卵すると排卵後にできる黄体の働きが悪くなり、黄体ホルモン(プロゲステロン)が十分分泌されなかったり、子宮内膜が十分厚くなることができません。
基礎体温の低温相と高温相の差が小さかったり、高温相が不規則であったり、日数が短かったりするのが特徴です。流産の原因にもなります。
卵管は精子と卵子が出会い受精と分割が行われる場所です。
卵管の先にある卵管采に癒着があって卵子を取り込めない「ピックアップ障害」や、「卵管内の通過性に問題がある「卵管通過障害」があります。
クラミジアなどによる感染症、骨盤内手術の経験、子宮内膜症なども原因として考えられます。
子宮に先天的な形態異常や子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔癒着症などがあると子宮内膜が損なわれ、着床障害を引き起こす可能性があります。
子宮頸管粘液は、排卵日近くに子宮の入り口を満たす水様透明の粘液で、精子を通過しやすくさせる働きがあります。
子宮頸管粘液の分泌量が少なかったり、粘液の性状が悪いと精子が子宮内に進入しづらくなります。
子宮内膜によく似た組織が、子宮以外の腹膜や卵巣などに発生する疾患で、月経痛や性交痛などを訴える方もいます。
子宮内膜症では、卵管の通過性や卵巣機能の障害を起こしたり、着床や卵子・精子・受精卵に影響を及ぼすこともあります。
精子の数が少ない「乏精子症」や精子が全くない「無精子症」、精子の運動性が低い「精子無力症」、精子の形態に異常がある「精子奇形症」などがあります。
造精機能障害を引き起こす主な疾患として「精索静脈瘤」があります。
精索静脈瘤では、精巣の静脈が逆流して瘤ができ、精巣内の温度上昇などが原因となり造精機能が低下します。
造精機能には問題はありませんが、精子の通り道が閉塞しているために「無精子症(閉塞性無精子症)」となります。
主な原因には、先天性の精路欠陥、鼠径ヘルニアの手術、精巣上体炎や精管結紮術、射精管閉塞などがあります。
勃起や射精といった性機能に問題があり、通常の性交ができない状態です。
〔身体的要因〕動脈硬化、高血圧、糖尿病、ホルモン異常など
〔心理的要因〕性交に対する緊張や過去の性交における失敗、ストレスなど
膣内では射精できない膣内射精障害が多くみられます。その要因としては、妊娠へのプレッシャーや不適切なマスターベーションがあげられます。他に糖尿病や腹部手術による逆行性射精もみられます。
精子と結びついて、その運動性や受精能力を損なう抗体が、男性にも女性にもあることがあり、これらの免疫反応が原因となって不妊になる場合があります。
男女双方が検査を受けても、ともに異常が認められないこともあります。
こうしたケースは「機能性不妊」(または「原因不明不妊」)と呼ばれます。
原因が特定できないため明確な治療方針が立てにくいという問題がありますが、さらに踏み込んだ検査を実施することにより原因が解明される場合もあります。
検査には、「一般不妊検査」と「特殊不妊検査」があります。
一般不妊検査は全員が受けるもので、原因をさぐるための基本的な検査です。特殊不妊検査は、さらに詳しい検査が必要と判断された場合に受ける検査です。
検査は、卵胞期・排卵期・黄体期・月経期という月経周期に合わせて進めるので、終了するまでに1~2か月かかります。個々のケースでは必ずしも一定のスケジュール通りに検査や治療が進むわけではありません。検査がすべて終わらないうちに、治療を平行して開始する場合もあります。
●基礎体温の測定 ●子宮頸管粘液検査 ●超音波検査 ●子宮頸管造影検査 ●ホルモン検査
●問診 ●視診、触診 ●精液検査 ●ホルモン検査 ●超音波検査
●精巣生検 ●精管・精のう造影検査 ●精子機能検査
体の動きが最も安静な状態にあるときの体温を「基礎体温」といい、それをグラフ化したものを基礎体温表といいます。婦人体温計を使って毎朝目が覚めたらすぐ口の中で測定します。
基礎体温表からは、排卵の有無、排卵時期の推定、黄体機能の推定ができますが、基礎体温表のみで排卵日を確定するのは困難です。
排卵があれば低温期と高温期の二相性となりますが、排卵がなければ一相性となります。
基礎体温には多くの情報が含まれていることから、受診の際は1か月以上測定した記録を持っていくと、今後の検査の予定もたてやすくなります。
子宮頸管粘液検査は、精子の進入性や卵胞の成熟の評価を行うため、分泌が盛んになる排卵期に行う検査です。
子宮頚管粘液の一部を採取し、量・透明性・伸びや粘り具合、乾燥させたときに見える結晶の形状を見ます。
膣内やお腹の上から子宮や卵巣の状態を写し出す検査です。
子宮筋腫や卵巣腫瘍の診断のほか、卵胞の大きさを測り、排卵を予測したり、子宮内膜の厚さを計測することができます。
子宮内に造影剤を注入して、子宮の形や卵管の通り具合、卵管采周囲の癒着などを調べるX線検査で、月経直後に行います。
卵管の通り具合によっては痛みを伴います。造影剤を通すことにより通りがよくなる場合もあり治療的意味も持っています。
ホルモン検査は、個々の状況や月経周期により、測定項目が異なります。
卵胞期には、LH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)、テストステロン(男性ホルモン)などを調べます。
また、黄体期にはプロゲステロン(黄体ホルモン)を調べます。
最近では、卵巣予備能の評価の1つとして、AMH(抗ミューラー管ホルモン)を調べることがあります。
ホルモン検査はいずれも血液検査となります。
腹腔鏡検査は、卵管の癒着や子宮内膜症などが疑われる場合などに行われる検査で、全身麻酔をかけて、へその下を1cmほど切開し、内視鏡を使って、直接卵管や卵巣周辺の状態を調べます。
麻酔の関係上、入院が必要になりますが、腹腔鏡下での手術も可能です。
この検査で、機能性不妊の原因がわかることもあります。
子宮鏡検査は、子宮腔に異常が疑われる場合に行う検査で、子宮の入口から内視鏡を入れ、直接、その状態を調べます。その場で、軽い癒着をはがしたり、ポリープを切除することもできます。
卵管鏡検査は、卵管に異常が疑われる場合に行う検査で、子宮側の卵管開口部から卵管内へと内視鏡を入れ、直接、その状態を調べます。その場で、軽い癒着をはがすこともできます。
現病歴、既往歴、薬の使用、喫煙歴、性生活など
体格、体毛の状態、精巣のサイズ、精索静脈瘤の有無、精管・精巣上体・前立腺の状態などを診察します。
精液検査は、2~7日間の禁欲期間後マスターベーションにより採取した精液を調べます。施設内での採取ができない場合は、1時間以内に持参する必要があります。この検査は、体調などにも左右されるため、少なくとも2回以上検査をします。
【精液検査の基準値】(WHO:2021年)
・精液量 1.4ml以上
・pH 7.2以上
・精子濃度 1600万/ml以上
・総精子数 3900万以上
・精子運動率 42%以上
・正常形態精子 4%以上
・白血球数 100万/ml未満
卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、男性ホルモン(テストステロン)などを調べます。
精索静脈瘤、精巣腫瘍の有無などを調べます。
精液検査で無精子症や乏精子症と診断された場合に、陰のうに1cmほどの切開を入れ、組織の一部を採り、成熟精子の有無を調べます。
陰のうに1cmほどの切開を入れて精管を取り出し、造影剤を注入して、X線撮影し、精管、精のう、精巣上体までの間に通過障害がないかをみます。
受精に至る過程の中で、精子の機能に異常がないかを評価する検査です。
精液所見に問題はないが、男性側に病因があるのではないかと推測される場合などに行います。
精子機能検査には、精子侵入検査(ハムスターテスト)やアクロビーズテスト、精子膨化試験、精子生存試験等があります。
性交後試験ともいわれ、排卵1~2日前に性交した後、子宮頚管粘液を採取し、その中で精子が元気に運動していることを確認する検査です。
運動性のよい精子が多数確認されるときは、妊娠の可能性が高いと判断されます。
この検査は、男性不妊や子宮頚管粘液分泌不全、免疫性不妊のスクリーニング検査としても有効です。
フーナーテストにより免疫性不妊が疑われる場合、採血によって抗精子抗体の有無を調べます。
染色体の異常が不妊の原因となる場合があります。
生殖能力と関係した染色体に異常があると、卵巣の発育が悪くなったり、流産の原因となったりします。
また、男性の性染色体はXYですが、X染色体が過剰にあることで、精巣の発達や男性ホルモンの分泌が損なわれ、無精子症の原因ともなります。採血して調べます。
お問い合わせ
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