重要なお知らせ
更新日:2023年12月27日
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治山事業は、保安林の機能(土砂災害を防止したり、水源をはぐくむなどのはたらき)を維持し向上させるために行われる事業です。
治山事業のなかで、山地の荒廃を復旧したり、山地の荒廃を未然に防ぐために設置される人工的な施設や構造物を治山施設と呼びます。
山地の荒廃は、「渓流荒廃」と「山腹荒廃」のふたつに分けられます。
治山事業でいう「渓流」とは、山林の中を、水が集まって流れる部分を指します。
山林を離れて、耕地や集落に流れた部分は対象となりません。
渓流を流れる水の勢いによって、渓流の底や岸が浸食され、浸食によって削られた土砂が下流に流れ出ている状態。
渓流がクネクネと蛇行し、森林の広い幅を浸食している状態。
浸食によって発生した土砂や、山腹の崩れによって落ちた土砂が、不安定な状態で、渓流の中に多量に貯まっている状態。
不安定土砂が雨水といっしょに土砂流や土石流として流れ出し、集落や農地、道路などを襲い、人命や財産に被害を与えるおそれがあります。
また、渓流荒廃が、山腹荒廃を引き起こす要因となることもあります。
山の斜面が崩れた状態で、さらに崩壊が広がりそうな状態や、崩落した土砂が流れ出しそうな状態のことを言います。
山腹崩壊には、山腹の表面の土砂だけが崩落する「表層崩壊」、山腹の地面深くから崩壊する「深層崩壊」、そして山腹上に点在する岩石が崩落する「落石」などに分けられ、雪が深い地域では「なだれ」も含まれます。
崩落した土砂が人家や道路などを襲い被害を与えることが、最も深刻な問題です。
また、一度崩落した山腹の斜面には、放置した状態では樹木などの植物が再生しにくいので、森林の公益的機能を低下させてしまいます。
渓流荒廃に関する治山施設には、主なものとして、谷止工・床固工などの治山ダム工、護岸工、護岸工と床固工を組み合わせた流路工などがあります。
治山施設の代表的なものです。
ダムとはいっても、治山ダムには水を利用する目的のために貯水するようなことはありません。
治山ダム工は、コンクリートで造られるのものが主流で、目的によって「谷止工」と「床固工」に分かれています。
ダムに透水性が求められる場合などは、金属の枠のなかに石などを詰めた「鋼製ダム」を採用する事もあります。
治山ダム工の主な目的
比較的傾斜が緩い山地を流れる渓流は、蛇のようにクネクネと蛇行し、大水が出るたびに流れる範囲を広げながら、山地の土砂を浸食することがあります。
このような状態を「乱流」と呼び、この乱流を食い止め、水の流れを固定し、土砂の浸食を防ぐのが「流路工」です。
流路工は、床固工というダムを適所に配置して渓流内の土砂の移動を止め、床固工の間の両岸に護岸工を設置するというのが、基本的な形です。
護岸工は、コンクリートブロックを積み上げて造るのが主流となっています。
流路工では、渓流の水を地下に浸透させるため、底面は土砂であることが基本です。
しかし、流れな急なところでは、写真のような「床張りブロック」というものを敷き詰め底面を保護します。
「床張りブロック」には穴があいており、水を地面に浸透させる能力を持っています。
さらに勾配が急な場所などでは、底が浸食されないように、コンクリートで底面を覆うこともあります 。
渓流荒廃に関する施設には、ほかにも、水や細かい砂利は止めないで大きな岩石だけを止める「スリットダム」や、水の流れる方向を変えて、岸辺に水流がぶつからないようにする「水制工」、など、様々なものがあります。
山腹荒廃地での施設は、「山腹基礎工」と「山腹緑化工」に分けられます。
「山腹基礎工」とは、崩壊した山腹斜面の安定を図るための施設です。
「山腹緑化工」は、山腹斜面の表面の動きを止めるとともに、早い時期に植物が生育するようにする施設です。
山腹基礎工の主なものが、「土留工」です。
崩れた山腹の最下部や、中腹のところどころに、等高線に沿った形に壁を設置します。
土留工の役割は、山腹をしっかりと固定することで、上部から落ち崩れようとする土砂を抑えます。
土留工の種類は、設置場所や土質など条件によって様々で、コンクリート土留工や、コンクリートブロック積土留工、金属の枠に石などを詰めた鋼製土留工、丸太を組んだ丸太積土留工などがあります。
大きな土の圧力がのしかかる部分ではコンクリート製を、あまり土の圧力がかからない部分ではコンクリートブロック積製を使うのが一般的です。
設置する地盤が柔らかかったり、土に浸みた水の圧力がかかるようなところでは、歪みに強く水を通しやすい「鋼製土留工」を使います。
木柵工は、その名の通り、丸太で造られた柵です。
「山腹緑化工」に含まれますが、植生の生育環境を整える目的を持つことから、「緑化基礎工」といわれます。
高さは、地上に出ている部分で40センチメートル前後のものが一般的につくられています。
木柵は、上部からの大きな土の圧力を受けるようなことはできませんが、山腹のごく表面の土砂の動きを止めることができます。
表面の土の動きを止めることは、森林を再生させるために、非常に重要なことです。
表面の土が動いている限り、植物の種子などが落ちて発芽しても、その芽はすぐに流されてしまい、いつまでたっても植物が再生しません。
しかし、表面の土の動きが止められると、自然の植物がきわめて再生しやすくなります。
筋工も山腹緑化工の代表的な方法で、木柵工と同じく緑化基礎工に含まれます。
筋工は、斜面の等高線に沿って、細かい帯を何本も入れて、斜面を階段状にしていく工法です。
斜面に何本も筋工を設置することで、斜面の雨水を分散させ、斜面表面の土の浸食を防止します。
また、階段状の斜面にすることで、植栽した木などの良好な生育環境を造成することができます。
筋工としてもっとも使用されているものは、丸太で作られた丸太筋工です。
丸太筋工は、木柵を低くしたようなもので、高さは10センチメートル程度です。
丸太筋工の背面に苗木を植栽します。
筋工の種類には丸太筋工の他に、土のうを並べた「土のう筋工」、石を積んだ「石筋工」などがあります。
伏工は、斜面全体を植物の種子や肥料などが含まれたマットなどで覆い、金属などのピンで固定する工法です。
斜面が急で、筋工などの方法が使えないような場合や、斜面全体が浸食を受けるおそれがある場合に使用します。
伏工の材料は様々で、稲わらをつなぎ合わせてシート状にした「わらむしろ伏工」や、天然繊維や化学合成繊維を使用した「植生マット伏工」などがあります。
植生マット伏工が多く使われていますが、マットの材料・構成は様々で、生分解性のものや、土壌分が含まれるもの、天然の種子を待ち受けるものなど、非常にバラエティーに富んでいます。
土砂の層が薄い山腹崩壊地では、岩盤が露出したり、植物が生育するための十分な土壌が無いことがあります。
十分な土壌がない場合、筋工や伏工などの緑化工法では植物が育ちません。
そういう場合に、植生基材吹付工という方法で緑化を行います。
植生基材吹付工とは、植物が生育するための基盤材に、肥料、水、そして植物の種を混ぜて(これを植生基材と言います)、植生基材を圧縮空気とホースを使って斜面に吹付ける工法です。
斜面には、植生基材が付着しやすいように、あらかじめ金網などを張っておきます。
急傾斜地など、崩壊が発生しやすい斜面では、格子状のモルタル枠などで斜面を抑えつけ、崩壊を抑制する工法を使用します。
この工法を、「法枠工」と呼びます。
モルタルの枠は、想定される崩壊の規模によって柱のように太くしたり、写真のように半円形のものなど、いくつかのバリエーションがあります。
格子状の枠内は、植生基材吹付工を施工するのが一般的です。
山腹荒廃地における治山施設は非常に様々で、コンクリート水路工や緑化水路工、暗渠工、航空実播工など多種多様ですが、それらの工法を組み合わせて、崩壊した山腹を安定させ、山林に復旧していきます。
水が集まりやすい地形であるとか、流れてきた水の排水経路はどうなのか、また過去に近くで土砂崩れがなかったか、知っておきましょう。
- わき水が増えた
- わき水が止まった
- わき水や沢の水、井戸などが急に濁った
- 裏山に亀裂が発生した
- 小さな石や土の塊がぽろぽろと落ちてきた
- 地なりが聞こえた
- 雨が降っているのに川や沢の水が減った
これらの現象は土砂災害の予兆である可能性があります。
土砂災害については、『山地災害に備える』 のページをご覧ください。
ふだんからの災害時への備えや避難行動等に役立てていただくため、降雨等により山や沢などから発生する土砂災害のおそれがある地区(山地災害危険地区)の情報をお知らせしています。
お住まいの近くで、山から土砂の流出があったり、山腹崩壊があったっときは、お住まいの市町村の担当課までご連絡ください。
県での治山事業の計画は、市町村からの要望によって実施します。
ただし、治山事業の実施に関しては、「保安林」に指定されている山林が対象となっておりますので、ご注意ください。(ごく近い将来、確実に保安林指定ができる地域に関しては、事業を実施できます。)
また、治山事業は保安林内の土砂流出や土砂の崩壊を対象にしており、雨水だけが流れ出てくるような場合は事業の対象外となりますので、ご了承ください。
お問い合わせ
県西環境森林事務所
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電話番号:0288-21-1178
ファックス番号:0288-21-1181