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更新日:2021年3月29日

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生物多様性とは

 生物多様性とは
生物多様性の恵み・保全する意義
栃木県の生物多様性の概要及び特徴
生物多様性の危機

 生物多様性とは

  生物多様性とは、全ての生物の間に違いがあることです。多様性には、生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性、という3つのレベルがあります。

(1)生態系の多様性

  生態系の多様性とは、森林、湿原、河川など様々なタイプの自然環境があることをいいます。それぞれの場所には、その地域特性に応じた生態系が成立しています。

森林内を流れる沢 湿原景観(戦場ヶ原) 山岳景観(茶臼岳)

写真:本県には、森林、湿原、山岳など様々なタイプの自然環境があります。

(2)種の多様性

  種の多様性とは、様々な種類の生物が生息・生育している状況のことです。本県では、17,000種を超える動植物の生息・生育が確認されています。例えば、ひとくくりにカエルと言っても、ニホンアマガエル、ヤマアカガエルなど多くの種が存在します。

鏡沼のモリアオガエル アズマヒキガエルの幼体 ニホンアマガエル

写真:左から、モリアオガエル、アズマヒキガエルの幼体、ニホンアマガエル。種によって生息場所や生態は様々です。

(3)遺伝子の多様性

  遺伝子の多様性とは、同じ種でも、その生息・生育する場所によって、様々な違いがあることです。例えば、同じゲンジボタルでも、東日本と西日本では発光の間隔が異なることが知られています。また、県内に生息しているミヤコタナゴでも、水系ごとに遺伝子が大きく異なることが確認されています。

  生物は長い年月をかけて進化し、異なった「個性」を獲得してきました。このお互いの「個性」を活かした生物どうしの「つながり」が、地域特有の生態系や自然景観を生み出し、また、世代を超えた命の「つながり」が、今、私たちが生活している地球環境を創り上げてきました。この「個性」と「つながり」が生物多様性なのです。

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 生物多様性の恵み・保全する意義

  私たちの快適で安全な暮らしは、生物多様性によって様々な面で支えられています。生物は、それぞれが一定の役割を持ち、互いに影響しあって生態系を形成していますが、土壌の形成や水の循環などによる自然環境の維持・形成や、気候変動の緩和、汚染物質の浄化、花粉の媒介などの調整的な機能もその例です。
  また、私たち人間の生活に必要な食料、木材、衣服、医薬品なども生物多様性によって支えられているとともに、私たちは、生物の機能や形態の産業への応用(ネイチャーテクノロジー)、農作物の品種改良など、生物多様性を間接的に利用することによって、豊かな暮らしにつながる有用な価値を生み出しています。
  加えて、豊かな自然環境は、自然とのふれあいや安らぎの場などを提供するばかりでなく、地域特有の文化などにも大きな影響を与えています。

大雨後の森 カタツムリ

写真右:例えば、カタツムリの殻の表面構造は、汚れがつきにくく落ちやすい家の外壁材などに応用されています。

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 栃木県の生物多様性の概要及び特徴

  本県は、山岳、河川、湖沼、湿地など変化に富んだ地形を有しています。また、北西部の山岳地帯が太平洋側気候と日本海側気候の境に位置するとともに、南方系と北方系の植物の境界といわれる年平均気温13℃の等温線が本県の中央部を横切っています。このように地形的、気候的に多様であることから、様々な動植物が生息・生育しています。

 1. 地形・地質

  本県の地形は、北西部山岳地帯、八溝山地及び中央平野部の3つに分けることができます。
  北西部山岳地帯には、日光、高原及び那須の第四紀火山群や、古生代から中生代にかけて海洋底に堆積した地層で形成された足尾山地などが含まれ、平均標高が1,000mを超える急峻な地形となっています。また、鬼怒川や那珂川の源流部は深い渓谷が刻まれており、険しい地形が形成されています。
  一方、八溝山地は地質的には足尾山地と同様ですが、標高が600mから1,000mの緩やかな山地帯で、南に向かって高度を下げながら、茨城県境に沿って南北に連なっています。また、県東部を南に流れる那珂川は、八溝山地と中央の平野部の境界となっています。
  さらに、これら東西の山地帯に挟まれた中央平野部は、北から高久丘陵、那須野ヶ原の扇状地、喜連川丘陵、宇都宮丘陵などが連なり、南の低地へと続いています。
  この地域には、栃木県内外の火山からもたらされた関東ロームや火山砕屑物が厚く堆積し、鬼怒川をはじめとする河川の浸食により台地や段丘地形が形成されています。
大倉山方面から茶臼岳  竜化の滝

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 2. 気候・気温

  本県は、基本的に温帯湿潤気候の太平洋側気候に属していますが、標高の高い北西部の山地では、日本海側気候の様相を呈しており、雪が多く、11月から4月まで積雪があります。
夏季は、山地、平野部とも晴天の日が多くなりますが、内陸特有の気温の上昇により雷が発生し、その発生数は関東随一です。
  冬季は、特に朝の冷え込みが強く、平野部でも氷点下の日が多くなります。また、男体おろし、那須おろしなどと呼ばれる北西季節風が吹き、平地では乾燥した冬晴れの日が多くなります。
降水量は、北西部の山地で多く、日光方面では年間2,000mm を超えますが、平野部では1,600mm 前後となります。
  本件の気温分布は、ほぼ等高線に沿っています。県内の平均気温は、平地の宇都宮で約14℃、山地の奥日光(中禅寺湖畔)で約7℃となっており、標高差による気温の違いがよく分かります。
 那須の冬の森

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 3. 植物

  県北西部に亜寒帯及び冷温帯、県南部に暖温帯の植物が分布しています。亜寒帯にはコメツガ、シラビソなどの針葉樹、冷温帯にはミズナラ、ブナなどの落葉樹、暖温帯にはカシ類、スダジイなどの照葉樹が見られます。
  また、冷温帯と暖温帯との間に中間温帯と呼ばれる地域があり、イヌブナ、コナラ、モミなどが見られます。これらの樹木が優占する中間温帯林は植物相が豊かで、種の構成も複雑であり、生物多様性の面からも重要な植生ですが、現在その大部分は水田や植林地などに置き換わっています。
  本県に生育している植物の大部分は太平洋要素と呼ばれる植物ですが、県北西部は雪が多く、積雪が遅くまで残る地域があり、ハイイヌガヤ、チシマザサなどの日本海要素と呼ばれる植物が見られます。
  地形的、気候的に様々な自然環境が存在することから、シラネアオイ、コウシンソウ、ニッコウキスゲ、シモツケコウホネ、ナスヒオウギアヤメなど本県の地名が付けられた植物をはじめとして、5,488種もの植物(藻類・コケ類等を含む)の生育が確認されています。
 芽生え_140614塩原 ミズナラの大木_七千山

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 4. 動物

  哺乳類は、カモシカやヤマネなどの山地性の種や、平地に生息しているタヌキやノウサギなどが県内に広く分布しており、51種が確認されています。
  鳥類は、293種が確認されていますが、通常県内で見られるのは年間170種前後です。特に、那須野ヶ原に生息するオオタカや喜連川丘陵のサシバは、全国でも有数の生息密度を誇っていますが、これは、生息地である平地林や谷津田が本県によく残っているためです。
  爬虫類は、アオダイショウやニホントカゲをはじめとして、日本の本州、四国及び九州に広域で分布する在来の陸生爬虫類15種のすべてが確認されています。また、両生類も、関東地方の北部に生息するアカハライモリやトウキョウダルマガエルなど18種のすべてが確認されています。
  魚類は、ニッコウイワナ、アユ、ミヤコタナゴ、陸封型のイトヨのほか、発見例の極めて少ないミツバヤツメなど、淡水魚類57種が確認されています。なお、ミヤコタナゴは日本の固有種であり、かつては関東地方に広く分布していましたが、現在は本県と千葉県のごく一部にしか生息していません。
  昆虫類は、本県が分布の北限とされているヒラタクワガタやシルビアシジミをはじめとして県内で1万種前後が確認されています。このような多様な昆虫類が生息しているのは、日光、那須などの高山帯から、県南部の低地の照葉樹林帯、那珂川、鬼怒川などの河原、渡良瀬遊水地などの湿地まで多様な自然環境があるためです。
  このほかに、マツカサガイなどの貝類などを含めると、11,660種もの動物の生息が確認されています。
 ミヤコタナゴとマツカサガイ写真:ミヤコタナゴ

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 5. 生態系

  本県の生態系は、植生や地形などを考慮すると、原生的な自然が残る「奥山自然地域」、奥山と都市の中間に位置し、集落とそれを取り巻く雑木林・人工林、農地などで構成される「里地里山地域」及び人間活動が集中する「都市地域」に分けられます。
  さらに、これらの地域を構成する要素であるとともに、それ自体が特徴的な生態系として「河川・湿地地域」が挙げられます。

(1) 奥山自然地域

  日光国立公園(外部サイトへリンク)を中心にミズナラ、ブナなどの原生的な森林、ツキノワグマ、カモシカなどの大型哺乳類、イヌワシ、クマタカといった行動圏が広い大型猛禽類など、希少な動植物が生息・生育しており、首都圏の中でも有数の豊かな自然環境を有する地域です。
  この地域は、気候条件に応じて成立する本来の植生がまとまって残されている地域であり、本県の動植物が将来にわたって生息・生育していくための核となる地域として重要です。
 中禅寺湖

(2) 里地里山地域

  平成21年の環境省調査によると、本県は、里地里山の面積が関東地方で最も広く、県土に占める割合も全国で第8位となっています。また、平野部に数多く残る雑木林は平地林と呼ばれ、本県を特徴付ける景観となっています。
  この地域は、薪炭利用や農耕といった人間の働きかけを通じて形成された森林、草地、水田、ため池など多様な環境が入り混じってモザイク状になっています。このため、カタクリ、キキョウなどの植物、オオタカ、サシバなどの中型猛禽類、メダカ、ミヤコタナゴなどの用水路に生息する魚類、オオムラサキ、ゲンゴロウといった昆虫など、多様な動植物を育んでいます。
  しかしながら、これらの中には、絶滅のおそれのある種が多く含まれており、里地里山地域は、奥山自然地域とともに、本県の生物多様性を支える重要な役割を担っています。
 フクジュソウ カタクリ

(3) 都市地域

  高密度な土地利用がなされている都市地域でも、社寺林、都市公園、街路樹などの緑地が残されており、身近な生物が生息・生育しています。
  これらの都市の緑は、近隣住民が自然とふれあうとともに、安らぎを与えてくれる身近な場所としても大変貴重なものとなっています。

(4) 河川・湿地地域

  本県の河川は、森林や農地、都市から隣県を通って海へとつながっており、魚類をはじめとした水生生物や水鳥の生息・生育地として重要な地域です。
  関東最後の清流と呼ばれる那珂川などでは、多くのアユやサケが遡上しています。また、水域だけでなく関東有数の礫河原を有する鬼怒川の中流域は、かつて日本一の群落を誇っていたカワラノギクやシルビアシジミなどの貴重な生息・生育地となるとともに、本県を特徴付ける生態系となっています。
  さらに、日本を代表する湿原として国際的にもその重要性が認められ、平成17年にラムサール条約湿地に登録された「奥日光の湿原」や、本州で最大の湿地面積を誇り、約3,000種もの動植物が生息・生育している渡良瀬遊水地は、本県の生物多様性に大きく寄与しています。
 小田代原 乙女の滝

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 生物多様性の危機

  本県の豊かな生物多様性は、次の4つの要因によって脅かされています。

第1の危機  人間活動や開発などによる危機

  人間活動や開発などが生物多様性へ影響を与えています。例えば、観賞や販売目的による生物の捕獲・採取などの人間活動や開発などの土地利用の変化によって生息・生育地が減少したり、種の絶滅などが起こっています。

シモツケコウホネ ザゼンソウ ハクサンチドリ

写真:左から、シモツケコウホネ、ザゼンソウ、ハクサンチドリ。いずれも絶滅のおそれがある種です。レッドデータブックとちぎ2018の掲載種のうち、乱獲が減少の理由の1つとなっている種は、維管束植物だけでも111種にのぼります。

第2の危機  人間活動の縮小による危機

  第1の危機とは逆に、人間による自然への働きかけが少なくなることによって影響が出ています。里地里山などの身近な自然は、長い歴史の中で人間からの働きかけにより多様な生物の生息・生育地となってきました。しかし、生活様式の変化や高齢化などにより人の手が加えられなくなり、自然の質が変化して多様性が低下しつつあります。

カタクリ

写真:カタクリの花。人が手入れを行っている里山の環境は、カタクリの生育に適しています。

第3の危機  人間によって持ち込まれたものによる危機

  国内に持ち込まれた外来種の影響により生態系の攪乱が起きています。ブラックバスやオオハンゴンソウなどの外来種が、地域固有の生態系や種に対して大きな脅威を与えています。

アメリカザリガニ

写真:アメリカザリガニ(外来種)。水生昆虫の捕食や水草などにより生態系に大きな影響を与えてしまいます。

第4の危機  気候変動・地球温暖化による影響

  地球温暖化も生物多様性に大きな影響を与えています。
  2014年に公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、地球平均気温は1880~2012年の期間に0.85℃上昇しており、今後も気温上昇は続くと予測されています。また、日本の平均気温も100年あたり1.15℃の割合で上昇しています(1898~2014年観測記録より)。(IPCC第5次評価報告書(環境省))
  地球温暖化により、高山帯や湿地など環境の変化に対して弱い地域を中心に生物多様性に深刻な影響が生じることは避けられないと考えられています。

イワカガミ クロマメノキ ハクサンフウロ

写真:県内でみられる高山帯の植物。寒冷な高山帯の生態系は、温暖化により深刻な影響を受けます。

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